平成20年度は、過去2年間において行った大規模調査のまとめを行った。先行研究や現在の肢体不自由教育の動向などを検討した上で、考察を行い、論文としてまとめる作業を行った。この調査から得られた知見は、肢体不自由のある児童生徒の日常生活実態が、どのような要因によって決定されているかを多変量的に見出したものであり、今後の肢体不自由教育における実態把握や課題設定に寄与するものと考える。具体的には、肢体不自由のある児童生徒の日常生活は、身体運動能力に加えて、コミュニケーションの表出力に大きく影響を受けており、また年齢による自立度の上昇も顕著であった。 同時、平成20年度は縦断的に調査を続けてきた協力児のデータをまとめ、分析を行った。肢体不自由のある児童がどのような日常生活の変化が生じているのかについて、詳細に記述することができた。彼らの生活実態を長期的に調べた先行研究は少ないために、非常に貴重な資料を収集できたと考える。要点としては、彼らの日常生活の変化は身体運動能力の変化に伴うものがほとんどであったこと、変化の生じやすい生活領域として食事や衣服の着脱があがったことなどを見出した。これらの結果については、今後、関係学会などにおいて公表していく予定である。
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