平成20年度は、平成19年度より開始した、箱庭制作、および箱庭制作過程における体験について擬態語を用いた手法による振り返りを行う本調査を引き続き継続して行った。本調査を通じても、引き続き、その中で見出された課題についてその都度検討と改善を図り、その過程そのものを本研究全体における考察の対象となるよう積み重ねていった。本調査を通して、箱庭制作過程における体験を捉える手法として開発した擬態語(擬音語を含む)という近感覚的な表現様式にもとづいた手法を箱庭制作の振り返り段階において用いることによつて、箱庭制作過程における、時に捉えるどころのない体験を、「音」あるいは「リズム」というような身体感覚に近い形で表現し、より制作者自身の「体験」にアプローチし捉え直すことが可能となった。その中で、箱庭制作過程における制作者の体験として、「ミニチュアを選ぶ」、「ミニチュアを置く」、「砂にふれる」といった箱庭制作過程の要素一つ一つにおける体験が抽出され、そうした体験のそれぞれが箱庭制作を通して一つの箱庭作品として結実していくことが明らかとなった。また、箱庭の中に漂う「空気感」や、箱庭に置かれた人物の「気持ち・心情の動き」、箱庭内の「動き」といった、一見固定されたように見える箱庭作品の中に、制作者宮身の「体験」とつながった動的な要素が込められ、制作者に感じられていることが見出された。このように、本研究を通じて、箱庭制作過程について、制作者自身の「体験」、特に視覚のみならず触覚、聴覚等幅広い五感を含めた身体感覚をベースとした「体験」にアプローチすることで、制作された箱庭そのものについてより精緻に捉えることの一助となりうる可能性があることが示された。以上のような点なども含めて考察を行い、これまでの研究全体のまとめを行った。
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