研究概要 |
評価懸念(fear of negative evaluation)は,「他者からの否定的な評価あるいは否定的に評価されるのではないかという予測に対する不安」と定義される概念である。 本年度は,子どもを対象としたスクリーニングテストを実施し,評価懸念の程度によって児童生徒を分類したうえで,個人が学級での対人関係の持ち方をどう把握しているかや,学級場面におけるストレス等の変数との関連について検討することを目的とした。その結果,評価懸念が高く社交性の低い児童の学校享受感が最も低いこと,また評価懸念が低くとも社会性がともに低い場合には,学校享受感がやや低くなることが明らかとなった。このことから,評価懸念が高い子どもに加え,評価懸念が低くかつソーシャルスキルに課題を抱える子どもに対して介入する必要性が示唆された。なお,これらの研究成果の一部については,平成19年度に開催される学会において発表する予定である。 また,評価懸念の高い児童生徒の対人行動特徴を客観的に把握するため,観察法による第三者評定調査および教師に対する半構造化面接法による調査を実施した。その結果,学校における日常的指導場面で教師が肯定的評価を繰り返し行うだけでなく,周囲の級友による肯定的評価をいかに引き出し日常化させるかといったことが課題であることが分かった。さらに,教師は児童生徒の評価懸念の性差(男子<女子)については正確に認識しているものの,担任する子どもの年齢の上昇にしたがって,評価懸念の程度はとらえにくいものになっていくことが明らかとなった。また,教師の経験年数によらず,子どもの評価懸念という内的な特性を客観的に把握することの難しさと,スクリーニングを早期に実施して児童生徒の自己評価と客観的評価を照らし合わせ,日常の指導を行っていくことの重要性が示された。なお,これらの結果の一部については,平成19年3月に発表を行っている。
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