平成19年度においては、研究協力機関(一般病院)の透析医療現場、緩和医療現場における事例研究を実施してきた。その成果の一端については、2007年11月に日本リハビリテイション心理学会において発表した。 平成20年1月15〜23日においては、渡米し、疼痛ケアや疼痛マネジメントを全人的ケアとして位置づけた取り組みをしているニューヨークのCANCERCARE (Nonprofit Organization)、 CALVARY HOSPITAL、 BETH ISRAEL CANCER CENTER、 MEMORIAL SLOAN-KETTERING CANCER CENTERの4施設を訪問した。アメリカでは、余命6カ月との診断を受けた患者はすべて緩和ケア病棟に入ることができるが、在宅率は80%を超え、緩和ケアの目的はCureでなくCareに徹していることがうかがえた。保険制度の問題もあり、長期入院は避け、外来を基本とするため、NPO法人CancerCareでは、がんと診断された貧しい患者の通院費を負担するシステムを持っていた。また、在宅率が高いためか、高度な緩和ケアの知識と技術を持ったナースホームナーシングシステムが組織されていた。Beth Israelにおいては、医師、院内看護師、訪問看護ナース、オンコロジーソーシャルワーカー、パストラルケアワーカー、ミュージックセラピストやサイコロジストなどの多職種で構成されたチームカンファレンスに参加する機会を得て、疼痛緩和に向けては医療のみならず、心理社会的な疼痛緩和ケアの実践が行われていた。疼痛対策には、瞑想法などの統合医療的発想にエビデンスを加える取り組みがなされ、疼痛により低下したセルフケア力の賦活を目指した臨床動作法の取り組みは高い関心を呼び、プレゼンテーションとデモンストレーションの機会を得て、有益なディスカッションをすることができた。
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