研究概要 |
本年度は、2つの中学校の教育相談・生徒指導の体制づくりに関わり、連携を円滑にすすめるための情報交換会議、あるいはケース検討会議を行いつつ、そこでの教職員の相互作用の過程を記述した。教育相談・生徒指導のコーディネーターがかかえる現状への不満、あるいは自身の教育観、生徒観、これまでに成し遂げた成功、将来への不安感などをインタビューしつつ、その結果をもとにして介入するというアクションリサーチ的手法を用いた。 その結果、(1)A中学のコーディネーターは、校内での他教師とのやりとりにストレスを感じてはいなかったが、校内で「気になる」生徒の状況をつかみにくいことを課題と感じていた。従来から開かれていた「情報交換」の会議を、より効率的なものとし、教員が抱え込みがちになる生徒の問題を、全員の問題として検討する雰囲気をつくることを目標に、A校に即したシステム構築をすすめた。その結果、連携がうまくいかない点が、コーディネーター自身にも自覚されてきた(発心,2007)。(2)B中学では、当初、コーディネーターと他教師との情報交換が不十分なことから、生徒の処遇をめぐって意見が衝突することもあった。コーディネーター自身、衝突を回避しようとするあまり、生徒の問題を自分で抱え込むこともあった。そこで他教員との衝突にともなうストレスを緩和し、問題意識を他教員にもわかりやすく発信する方法について話しあった。その結果、後半では、コーディネーターも、他教師により積極的に発信していくことの重要性に気づき、円滑に連携できるようになった(教心,2007)。このように、それぞれの学校の特性に応じた困難はあるものの、教員間での認識のズレには、新たな実践をうむ創造的な潜在力があり、互いの対話を続けさせるような介入が有効となることがわかった(日心,2006)。さらに連携・協働的体制を構築するための道具、工夫について調べることが課題として残された。
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