3年の継続研究の初年度である平成18年度は、調査研究の方法論の検討を行うと同時に、調査の対象となる祭りの選定作業を行い、年度の後半より実際の調査を開始した。 本研究の目的は、祭りで使用されるシンボルが、シンボルを体験するものの意識にどのような作用を及ぼすか、そして、シンボルのどのような運動が意識に作用をもたらし、意識の変容を可能にするのかを探るものであり、これらを実際の祭りに関与観察することで、その象徴作用を分析するものである。その分析方法を確立するため、分析心理学を現象学の視点から理論的に洗い直し、シンボルの運動を把握する方法的な態度を検討した。 それと並行して、調査対象の選定作業が以下の手順で行われた。(1)近畿二府五県について、都道府県別に代表的な祭りを広範に取り上げている図書を複数収集し、そこでに紹介されている祭りの概要を全て要約した。祭りの総数は379件であった。(2)すべての祭りについて、祭りを構成する代表的シンボルを抽出した。その結果、食べ物に関するシンボル9個、道具に関するシンボル31個、装飾に関するシンボル7個、人間や動物に関するシンボル33個、火と水と土などに関するシンボル10個、芸能33個が抽出された。また、各シンボルに関連して行われる象徴的な行為として46個の行為を抽出した。(3)こうして抽出したシンボルを月別に集計し、頻発に使用されるシンボルを見ると、近畿の祭りにおいて各季節で使用される代表的なシンボルが明らかとなった。それによると、新年には「火」や「松明」、春先には「神輿」、初夏には「馬」や「御田」、夏に「神輿」、盆に「盆踊り」、そして秋に再び「神輿」が、各季節の祭りで使用される代表的なシンボルとして抽出された。 以上の結果に基づき、平成18年度は二つの祭りの調査を実施した。2月に和歌山の「御燈祭り」、3月に滋賀の「日牟礼の左義長」を調査した。 今後フィールドノートを順次検討し、シンボルの運動と意識変容の関連を分析していく予定である。なお、上記の理論的検討および本研究の調査以前に行った予備調査などを踏まえ、祭りと心理療法の関係を考察し、学会発表を行った。
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