研究概要 |
本研究の目的は,典型的な通過儀礼の構造(分離一境界一統合)を持ち,劇的な象徴体験によって集団の意識状態を変容させる祭りへの参与観察を行い,その中で直接的に象徴を体験し,その体験を分析心理学の手法によって分析し,意識変容に及ぼす象徴の作用を解明することである。 近畿二府五県について,都道府県別に代表的な祭りを広範に取り上げている図書に紹介されている祭りから代表的なシンボルを抽出し,各季節別に頻繁に使用されるシンボルを明らかにした。それによると,新年には「火」や「松明」,春先には「神輿」,初夏には「馬」や「御田」,夏に「神輿」,盆に「盆踊り」,そして秋に再び「神輿」が,各季節の祭りで使用される代表的なシンボルであるとわかった。 平成19年度は,「御田」の調査として6月に伊雑宮の「磯部の御神田」,夏の「神輿」の調査として7月に大阪天満宮の「天神祭」,「盆踊り」の調査として8月に円光寺の「東盆踊」,そして秋の「神輿」の調査として10月に上野天神宮の「上野天神祭」への参与観察を行った。 以上の調査から,通過儀礼における象徴体験の背後に,異なる二つの実存様式の弁証法的運動があることが見えてきた。その観点を応用して,「心理療法におけるイニシエーション・モデルの検討」という論文を発表した。
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