研究概要 |
本年度は健常成人のストレス刺激に対する心拍反応動態と唾液中のアミラーゼ活性の関連性の検討を行った。本年度のこの課題は次年度以降に行う障害事例などを対象とした研究の統制条件として位置づけている。 具体的には心身ともに健康な大学生11名を対象に,卓上型低温恒温水槽で作成した9±0.1℃の冷水を寒冷昇圧刺激として用い、各被験者に非利き手根部の冷水入水を求めた(最長600秒)。記録指標としては入水中に心拍、体温の他に痛みの主観的指標としてVAS(visual analog scale)と生化学的指標として唾液中のアミラーゼ活性を測定した。 その結果、寒冷昇圧刺激により生じた痛み感覚は主観的にも(アミラーゼ活性の程度からみた)生化学的にも約180秒をピークに減少する傾向がみられた。このことより、痛みが唾液中のアミラーゼ活性に敏感に反映することが確認された。 また同時に記録した心拍について変動係数(HRV)、さらに周波数解析により約4秒周期(約0.25Hz)で現われる呼吸性変動としての高周波成分(HF成分)と約10秒周期(0.10Hz)の大動脈圧調節系に由来する低周波成分(LF成分)を抽出した。この結果からは、HRVの変化はあまり見られなかったものの、HF成分は入水中に大きく減少した。以上のことから、ストレスが増大したときに唾液中のアミラーゼ活性と心拍のHF成分の変動は相関していることが示唆された。
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