研究概要 |
アタッチメント投影的測度である親子場面刺激画(親子状況ピクチャー;PARS)については、欧米で開発途上のアタッチメント投影測度に関する研究の動向を踏まえ、刺激画をいくつか改定した。これを、大学・短大生90名(男性25名、女性65名)(平均年齢19.31歳、SD0.76)に施行し、PARSへの反応結果と、「成人愛着スタイル尺度(日本語版ECR)(中尾・加藤,2004)」との関連を検討した。日本語版ECRの26項目について因子分析を行ったところ、固有値の推移状況と解釈可能性とから2因子解が妥当と判断した。Varimax回転を行い、因子負荷量がいずれかの因子に.35以上の項目を選択した。各因子に含まれた項目は、中尾・加藤(2004)と全く同じであった。2因子による累積説明率は65.2%であった。中尾・加藤(2004)にならい、第1因子を"親密性の回避"(17項目)、第2因子を"見捨てられ不安"(9項目)とした。"親密性の回避"の平均値は3.22(SD1.05)、"見捨てられ不安"の平均値は3.97(SD1.26)で、ECRの2尺度の平均値に性差は認められなかった。PARSと日本語版ECRとの関連については、日本語版ECRで親密性の回避も見捨てられ不安も低く自己評定する者は、PARSへの反応において絵の登場人物を親子以外の設定にするなど、アタッチメント欲求の直接的表出を回避するような反応が認められた。これらは、投影的測度であるPARSと、意識的な自己評定質問紙である日本語版ECRとの関連であり、今後は、IWMの無意識的・防衛的情報処理過程をも扱うAAI(成人アタッチメント面接)との関連を検討する予定である。現在、AAIについては、大学生・短大生27名に実施済みであり、今後逐語録を作成し分析する予定である。また、子どものいる成人男女についても研究協力者を募り、PARS、AAI、IA(Insightfulness Assessment)を実施しているところである。IAについては、18年7月に開発者であるD.Oppenheimらによる講習(専門的知識の提供)を受けて、現在、分析の信頼性テストに臨んでいる。
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