PARSの反応傾向については、(a)葛藤や苦痛の表出が少ない反応パターン、(b)子どもは要求を表出し親がそれに応答する反応パターン、(c)葛藤や苦痛の表出が強い反応パターンに要約できた。乳幼児育児中の養育者と大学・短大生とで、性差と年代差を比較したところ、養育者は性差が少なく、(b)反応パターンが多かった。大学・短大生では、男性に女性より(a)(c)反応パターンが多く、父親が育児することへの戸惑いや、男の子は強くあるべきといった、伝統的性役割の影響が伺えた。大学・短大生を対象に、PARSと既存のアタッチメント測度との関連を検討したところ、日本語版ECRとめ関連よりAAIとの関連が多く認められた。自覚的な側面を捉える質問紙の日本語版ECRと、投影的手法のPARSとはアタッチメントの異なる側面を測定している可能性を考察した。AAIのアタッチメント軽視型(抽象的・全般的なレベルでは両親を肯定的に報告するが、それを具体的エピソードで裏付けられない、あるいは矛盾するような否定的なエピソードが語られる「理想化」という防衛が特徴的)は、安定自律型より、PARSで典型的な(b)パターンの反応が少なく、ほとんどの場面で葛藤や苦痛を強く表現する(c)パターンが多かった。これにより、おそらく拒絶的な体験を背景として「理想化」のような防衛を用いた語り方が顕著になるAAIアタッチメント軽視型は、PARSのような投影法において、否定的な養育者像をそのまま投影しやすいと考察した。以上より、無意識的な内的作業モデルの情報処理過程にも迫りうる成人アタッチメント測定法としてのPARSの妥当性が認められた。 この結果を8月に世界乳幼児精神保健学会(WAIMH)で発表し、他の研究者がPARSを用いた研究を始めた。また、PARSのさらなる精緻化のためのコメント、臨床場面での利用可能性についてのコメントを受けることができ、これらを今後の課題としている。
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