研究概要 |
今年度は,文献展望と,SEAのセラピストを対象とした面接調査を行った。 文献展望では,質問技法の効果について実証的な検討が行われていないことが明らかにされた。SFAの開発者らが指摘している,各質問技法の効果,影響をまとめたところ,以下のようになった。ミラクル・クエスチョンには「思考パターンの転換」「思考の柔軟化」「目標つくりの促進」「気分の改善」「希望の発生」が,例外を探す質問には「成功体験の自覚」「未来への希望」などが,スケーリング・クエスチョンには「見通しの獲得」「経験の具体化、明瞭化」「目標作りの促進」「長所の発見、強化」などが,コーピング・クエスチョンには「ネガティブな感情の緩和」「有効な対処能力への視点の転換」「対処していることへの自覚」「問題に取り組む希望と意欲」「感情と状況をコントロールしているという感覚」などの効果が指摘されていた。 面接調査は臨床経験5年以上のSEAセラピストを対象に実施しており,文献展望で示された効果以外の効果が指摘されている。例えば,ミラクル・クエスチョンには「認知の歪みの修正」「見通しの獲得」など,例外を探す質問には「自己認識の改善」「自己効力感の向上」など,スケーリング・クエスチョンには「全か無か思考の修正」「状態が変化するという認識の発生」「スモールステップへの意識」,コーピング・クエスチョンには「目標作りの促進」が効果,影響として挙げられている。また,各セラピストが各質問技法の効果として挙げた要因は様々であり,また各質問技法を用いる意図や方法も様々であった。これから,各質問技法の効果は,質問の種類に固有なものでは必ずしもなく,質問技法を用いる意図や方法によってかなり異なる可能性が考えられた。
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