研究概要 |
行動変容のTrasdtheoretical Model(TTM ; Prochaska & DiClemenete, 1983)では, 人が行動を変容するまでには, 行動に対する本人の準備性の違いによつて分類された5つの変容ステージ[前熟考, 熟考, 準備, 実行, 維持]を経過すると理解されている。本研究では, 高齢者の地域レベルでのストレス管理にTTMを適用したプログラムを開発するための基礎データ収集を自的とした研究を実施した。平成20年度は, 第1に, ストレス管理行動へのTTMの適用に関する文献展望を学会誌へ投稿し, この領域にTTMを適用する事の利点と限界(測定尺度の信頼性, 介入研究に理論を適用する際に生じる問題)について明らかにした。また, ストレス管理行動の変容ステージについて信頼性を検討した結果を学会誌に投稿した。ついで, 高齢者約2, 000名の縦断的なデータについて, TTMを構成する主要変数である変容ステージの予測的妥当性を検討した。また変容ステージによる1年後のメンタルヘルスの状態(抑うつと不安)の予測によって, 実行期, 関心期が1年後不安の予後不良であることが示され, これらのステージに所属する者のフォローの重要性が示唆された。抑うつについては前熟考期の1年後の予後が悪いことから, ストレス管理行動を地域で実践していくことの必要性が示唆された。以上の成果は学会で発表した。併せて, 高齢者の心身の健康に関する地域レベルでの介入, あるいは, 医療場面での高齢者のストレス等の心理的問題への対応等について書籍や学会で発表した。研究によって, TTMを用いて実際め介入プログラムを作成する際の理論上の問題点が整理され, 併せて地域高齢者の特徴が明らかになったと考えられる。
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