今年度は、1、援助者の統合失調症者(以下SC)理解における心理的障壁のあり方、2、地域住民と当事者(SC)をつなぐための援助(教育モデル)について検討した。 1、臨床実践における援助者のSC理解について調査した。長期入院中のSCを対象に、週に1度の集団心理療法である心理劇を1年間施行し、心理療法中のSC理解について、参加した医療スタッフ(看護師、臨床心理士、作業療法士)にアンケート調査を実施した。その結果(1)心理療法において日常とは異なるSCの姿を70%前後の援助者(看護師)が捉え、(2)特に看護師は重度の陰性症状があるSCに多くの発見(自己表現、自発性、未知の事実や気持ちなど)を行い、病棟生活とは異なる患者理解が心理劇を通して促進することが示唆された。長期入院のSCは認知障害だけではなく陰性症状のために内面を理解することが困難な問題があるが、このように臨床心理学的なアプローチにおけるSCの姿に触れることは、両者をつなぐ働きかけになることが示唆された(第35回西日本心理劇学会発表)。 2、当事者(SC)に情報伝達者として協力を求め、自らの体験を講演してもらい、知識としての理解だけではなく直接の関わりが大学生に与える影響について検討した。調査内容は、講演前後の意識変化(例:症状理解、自立に必要なことなど)である。回答内容を分類した結果、講演後にあらたに加わる項目があることが示された(例:自立に必要なことに対し、仲間とのつながり項目が追加)。これまで大学生に対し、授業の中での心理教育の効果が検討されてきたが、本研究結果より一般の人々の捉え方を是正するには、病気に関する知識を深めるだけではなく、SCとの直接の関わりも重要であることが示された。
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