研究概要 |
本研究では、ミニチュアの舞台と人形を通して即興劇を行いそれについて振り返る手続きを「投影ドラマ法(旧名称:間接的ドラマ法)」と名づけ、心理臨床場面での活用を目指すものである。平成18年度は主に以下の3点の研究成果を上げた。 第一に、「投影ドラマ法」のオリジナルの用具作成の一部を行った。申請者がこれまでの研究で「投影ドラマ法」の用具として用いてきたMAPS人格投影法検査用具(E.Shneidman, 1947)の舞台、人形、背景図版は心理検査を目的に開発されたものであり、治療の手だてを前提としては考えられていなかった。このため、治療という枠組みに適した用具についての吟味と用具の作成が必要と考えられた。本年度は、これら用具のうちオリジナルの舞台作成を目的に据えた。過去に得られた調査データをもとに、被験者が語る舞台の印象や使い心地等に焦点を当て、臨床場面により適した用具のあり方について検討を行った。また、文献研究を行い、日本の伝統芸能に関する知見も参考にした。これらに基づき、舞台の色、大きさ、材質等に関する具体的な方針を固め、概案を作成した。概案をもとに工務店に舞台制作を依頼した。 第二に、「投影ドラマ法」を用いた継時的調査を事例的に考察した。具体的には、即興劇や振り返り面接の内容を文字に起こした上で、見守り手である調査者との関係性を考慮に入れつつ次の2つの視点から考察した。1つは、即興劇の中で表現される感情やテーマに焦点を当て、それらを「表現者」が振り返り面接の中でどのように意味づけていくかを考察した。2つめは、表現の豊かさの度合いが「表現者」の内省といかに関連しているかについて考察した。この考察を論文としてまとめ、学術雑誌(『質的心理学研究』)に発表した。 第三に、現段階で考えられる「投影ドラマ法」の有効性と限界について学会発表(日本心理臨床学会)を行った。
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