研究概要 |
本研究では「間接的ドラマ法」の心理臨床場面適用に向け, 以下の2点の追考を目指した。第1に, 「間接的ドラマ法」の心理臨床場面における有効かっ安全な活用に向けて, 更に非臨床群を対象とした調査研究を重ね, その有効性と限界を明確化することである。第2に, 心理臨床場面で用いるのに適した「間接的ドラマ法」の用具を開発することである。 本年度は2点目の目的である, 「間接的ドラマ法」の用具の開発を中心とした研究を行った。これまで研究代表者は「投影ドラマ法」の用具として, Sheneidman(1947)が開発したMAPS人格投影法検査用具の人形と舞台と背景場面の図版を用いてきた。しかし, MAPS人格投影法検査用具は心理検査を目的に開発されたものであり, 治療の手だてを前提としては考えられているものではなかった。また, 人形の風貌も外国人のものであり, このことで戸惑いを感じる「表現者」(「表現する者」という意味でこう記す)も少なからずいた。このことから治療という枠組みのなかで違和感なく受け入れられ, 日本文化にも馴染む用具を作る必要性が感じられた。 そこで研究代表者は, 用具作成に先立ち, これまでの調査研究のデータと文献研究を踏まえ, 「投影ドラマ法」の用具作成にあたっていかなる配慮が必要かについて模索した。その結果, 多様な感情が投影されやすいよう人形の表情の喜怒哀楽を曖昧にすること, 人形の性別や年代に大きな偏りが生じないようにすること, 背景場面の図版には日常的なものも非日常的なものも採用すること, 舞台の上部に人形を置ける折りたたみ式の支えをつけるなどの配慮が必要であることが示唆された。 これら示唆に基づいて「間接的ドラマ法」の用具を作成した。この成果は日本芸術学会大会にて発表した。
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