研究概要 |
オスラットを非験体として(1)物体刺激をCSとした性条件づけの成立,(2)(1)の実験におけるテストステロン水準の効果,および(3)場所刺激をCSとした性条件づけにおける超音波発声CRの測定,について検討した。(1)に関する実験では,物体CSを発情メスUSに先行して提示し,接近行動をCRの指標として計測した。CSとUSの正の随伴的提示による興奮条件づけ群と統制条件としてCSとUSとの負の随伴的提示による制止条件づけ群を比較したところ,予測に反して,両者においてほぼ等しくCS物体への接近時間が増加した。各種のテストを行った結果,CS提示時の実験者の気配等の文脈刺激がCSとして機能して一般活動性の増加というCRをもたらし,それが結果として物体CSへの接近時間を増加させていたことが明らかとなった。(2)物体刺激への接近CRは,条件づけ後に実験的に操作された非験体オスのテストステロン水準に応じて変化した。この結果は,(1)の実験から,接近CRは一般活動性の上昇を反映したものである可能性が高いものの,それらのCRがオスラットの性的動機と関連していることを強く示唆するものである。(3)に関する実験では,特定の場所CSを発情メスUSに先行して提示し,CS滞在中の超音波発声をCRとして計測した。その結果,CSとUSを負の随伴性においた条件ではそのような超音波発声はほとんど生起しなかったが,正の随伴性においた場合には50kHzタイプの発声が条件づけ後に有意に増加した。この結果は,場所CSに対してその後のメスとの接触を予期した社会的反応として超音波発声が獲得されたことを示唆するものである。
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