研究概要 |
三次元空間内における視覚的注意に関する時間的特性を検討した.三次元空間における注意研究は実際空間と立体視による仮想空間のいずれかで行われることが一般的であり,総じて立体視の場合には刺激の提示時間が短い.また,三次元空間内での注意移動を調べるためには,先行手がかり(precue)による空間手がかりパラダイム(例えばPosner, et. al., 1978)が用いられる。このことは,注意が特定の奥行き位置に配分される場合,手がかり刺激の提示時間が重要な意味を持つことを意味する.そこで,先行手がかり提示時間が,三次元空間内での注意特性についてどの様な影響を及ぼすのかについて先行手がかりの反応時間に対する影響を指標として,実際空間内で検討を行った.具体的には,手がかり提示後に標的刺激が提示されるが,その際に正しい空間的位置に標的刺激が提示される場合と,逆の位置に標的刺激が提示される場合があった.加えて,先行手がかりの提示時間が200msと600msの条件が設けられた.その結果,提示時間が200msの場合には手がかりの効果が見られなかったのに対して,提示時間が600msの場合は手がかりの効果が見られた.また,標的刺激が先行手がかりとは逆の位置に提示された場合に反応時間の遅延が示された.先行手がかりの提示時間の長短によって手がかりの効果が異なったことから,豊富に奥行き情報が存在する実際空間と制限された奥行き情報を利用する仮想空間での注意配分の時間特性に違いが見られる可能性を示唆している.ただし,今回の結果は先行手がかりが内因的なものであったため,今後は外因的な手がかりに対しても検討を行う必要がある.
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