研究概要 |
起床直後には眠気の残る状態(睡眠慣性)が生じ,作業効率が一時的に低下することが先行研究では確認されている.本研究の目的は,エラー反応の脳内モニタリングを反映する事象関連電位(ERN : error-related negativity)と,エラーに対する詳細な主観的評価を反映する事象関連電位(Pe : error-positivity)を指標として用い,エラー反応のモニタリング機能が睡眠慣性によって低下するかどうかを検討することである. 睡眠障害が無く,仮眠の習慣が無い9人の被験者を対象として実験を実施した.14時から1時間の仮眠をとる条件と休憩をとる条件の2条件を設け,各条件で13時(仮眠・休憩の前:session 1)と15時(仮眠・休憩の後:session 2)から約30分間の認知課題(arrow-orientation task)を実施した.なお,被験者には実験3日前から,0:00から7:00までの睡眠をとるように指示し,その期間の実際の睡眠パターンを確認するため,腕時計型活動量記録装置を装着させた. 条件間で反応時間とエラー率に差は認められなかった.認知課題中のERNとPeの振幅を,それぞれ条件間で比較した結果,ERNの振幅には条件間で差が認められなかったが,Peに関してはsession2において,仮眠条件での振幅が休憩条件での振幅と比較して減衰していた.この結果から,1時間の仮眠後の睡眠慣性は,エラー検出そのものには影響を与えないが,エラーに対する注意や主観的な評価に影響を与えると考えられた.今後は,このデータをより詳細に分析するとともに,仮眠のタイミングや長さを変えた実験を行う予定である.
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