本研究では神経活動から実際に行う眼球運動の方向を予測すること、動物から長期間安定して神経活動を記録できる技術を確立することを目指す。平成18年度は電気生理学実験に必要な機器を購入し、神経活動を記録するための実験環境の整備を行った。また、複数の神経活動から眼球運動の方向を予測するために必要なプログラムの作成を行い、眼球運動が必要な行動課題を行っているサルの視床背内側核から記録した153個の神経活動を解析することにより、神経活動による眼球運動方向の予測を試みた。まず視覚刺激提示時の神経活動から、個々の神経細胞の好みの方向をベクトル表示し、それを加算したポピュレーションベクトルを作成した。その結果ポピュレーションベクトルの方向は正しく視覚刺激の方向を表現した。次に、眼球運動を行っている時の神経活動から、同様にポピュレーションベクトルを作成したところ、ベクトルの方向は正しく眼球運動の方向を表現した。そこで眼球運動を行う前に、眼球運動の方向を神経活動から予測することができるかを調べるために、視覚刺激の提示と眼球運動の開始までの間の待ち時間(遅延期間)にポピュレーションベクトルがどのように変化しているかを検討した。その結果、ベクトルの方向は、視覚刺激が提示された方向と眼球運動の方向が同じ条件では遅延期間にも視覚刺激および眼球運動の方向を表現し続け、視覚刺激と眼球運動の方向が異なる条件では、遅延期間に視覚刺激の方向から眼球運動の方向へとベクトルの方向が変化した。視床背内側核の複数の神経活動から計算されたポピュレーションベクトルの時間変化を調べることにより、実際に行う眼球運動の方向を予測できることが明らかになった。
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