連合学習によって形成された反応は、強化刺激を提示しないとしだいに減弱して生起しなくなる。この現象は消去と呼ばれている。本研究では、消去の脳内機構を明らかにするため、マウスの海馬に細胞内情報伝達に重要な役割を果たしているMEKの阻害剤を投与した。そしてそのマウスに文脈恐怖条件づけを行い、海馬のMEKがこの学習の獲得と消去に果たす役割を検討した。恐怖条件づけを行う前に薬物を投与する獲得条件と、条件づけ後24時間後に薬物を投与する消去条件の2種類の実験を行った。結果、獲得条件でも、消去条件でも海馬に投与したMEK阻害剤の効果は認められなかった。 瞬目反射条件づけは、小脳と海馬を必要とする課題である。海馬の関与を調べる前段階として、この条件づけに関わる小脳の役割を検討した。小脳核にGABAA受容体のアゴニスト・ムシモール(MSC)とアンタゴニスト・ピクロトキシン(PTX)を投与して、瞬目反射条件づけを行った。学習前の動物にMSCもしくはPTXを投与した獲得条件では、MSC投与群およびPTX投与群はどちらも有意にこの学習に障害を示した。さらに、学習した後にMSCもしくはPTXを投与した保持条件でも、MSC投与群、PTX投与群はともに有意にこの学習の保持に障害を示した。これらの結果は、小脳核のGABAA受容体が瞬目反射条件づけDelay条件に重要な役割を果たしていることを示している。この研究成果は、日本神経科学学会第29回大会(京都)および、OIST-KOREA Workshop(沖縄)で発表された。
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