検証する視点として、(1)民間委託を進める今日の自治体改革を、自治体が協働型の体質を獲得する改革にいかにつなげていくのか。(2)職員待遇が守られにくい構造のなかで、施設労働の専門性が保てる配慮や工夫をいかに導き出すか、(3)地元の公共財である施設の管理営を適切に評価できる住民が育つ仕組みをどのように構築するか、に絞り、その分析の枠組みを雑誌論文として発表(月刊社会教育2008年1月号)するとともに、宮城、千葉、関西などの現場関係者の方々との協議する機会を得て、現場の実態と認識把握につとめた。 本年度の調査における最大の気づきは、公設民営型を前提にこれからの社会教育を展望しなければならない現状下で実を取るためには、横断型のネットワークの存在のしかたがきわめて大きな意味を持っ、ということである。その意味で、あえて不安定な社会教育労働に身をおく若者たちを、自治体を越えてつなげようとしている和歌山大生涯学習教育研究センターのネットワークや、自治体横断的に職員の力量形成を長年にわたり取り組まれるなか、社会教育の専門職採用を続けている自治体が複数存在している千葉県の公民館関係者のネットワークなどの蓄積は、より注目されてよいと思われる。 そのほかの取り組みとしては、テーマに関連する政策動向(自治体改革、教育改革の動向)とその課題を整理し、その一部を発表した(公民館学会年報4号「政策動向」など)。また、日本社会教育学会のプロジェクト研究チーム、社会教育推進全国協議会の課題別学習会など、この問題を扱う研究協議のテーブルの企画・運営を担い、情報収集につとめている。
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