3年間の研究計画のうちの3年目として、「教育」と「心理臨床」の境界について、 (1)各文献に即したテクスト内在的な研究として、これまでの理論的成果をまとめるとともに、 (2)教育と心理臨床の境界に立ちあらわれる「実践」について、現在の大学を念頭に置きながら、教員養成における問題として、論じ直した。 (1)全国学会誌掲載論文として、『近代教育フォーラム』(教育思想史学会)にて、「フロイトからフロイト主義へ/病因論から教育言説へ-H・ハルトマンによる精神分析の心理学化と因果論の変容」が掲載された(査読・有)。教育の「心理主義化」といわれる今日的状況を批判的に問い直すため、正統的フロイト派とみなされてきた自我心理学派の代表たるハインツ・ハルトマンが、フロイトの思想をいかに受容し、またそれをどのように心理学的に変容させたか、そしてそれが教育といかに結びついたかを論じた。 (2)教育と心理臨床の境界に立ちあらわれる「実践」について、現在の大学を念頭に置きながら検討した。現実から遊離した高踏的研究のように受け取られがちである教育哲学や教育思想史が、多くの場合その背後に、教育現実に応えるというすぐれて実践的な課題があることを確認した。 (1)教育思想史学会コロキウムでは、現職教員(現職派遣院生)との共同研究を行い、教育実践における思想の必要性/有用性/可能性を論じた。(2)教育哲学会ラウンドテーブルでは、学生に対する質問紙調査などによって、教育実践現場や教職を志望する学生にとっての、教育実践/教育哲学・教育思想の意義を検討した。(1)(2)とも、改稿の上、平成21年度に学会誌に掲載される予定である。
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