近世寺院や僧侶に関する教育史的研究を試みるため、地域文化センターとしての寺院の性格に着目し、村の知識人や教師として僧侶をとらえる視座から考察を進めた。 町や村に住し、人びとが関係を切り結ぶ末寺僧侶が、その多くはかつて京都や江戸の仏教学の中心的教育研究機関で学んだ経験をもつ者であったことを明らかにした。 末寺僧侶が都市修学経験者という外部とつながる文化的外部性を備えることが、村や町における僧侶の知識人や教師としての文化性や権威性の背景を形成した。町や村をこえてネットワークを形成する庶民も成長しつつあったが、僧侶は都市の学問や文化とより深部において接しうる存在であり、その経験を通じて彼らが外部から町や村に運びいれる文化や学問の性質は、庶民のそれとは一定程度異なったことを明らかにした。
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