本年度は、昨年度に引き続きコンプリヘンシブ改革期の混合能力学級編成についての研究を行った。この研究については、すでに混合能力学級編成が普及するに際して「Mixed Ability Teaching」という新しい教育方法を生みだしたことを明らかにしたため、その実態をより詳細に考察していった。具体的には、A. V. Kelly、S. Hallam、C. Sewellたちの著作、ILEAの報告書、さらに昨年度の渡英の際に収集してきたオックスフォードの事例やDESのTeacher Education Projectなどで使われたワークブックなどの分析を行った。その結果、「Mixed Ability Teaching」には、子どもたちの個々の学力や学習ニーズに対応しようとした「個別化・個性化教育」の方向と、グループ学習などを中心にすえ、子どもたちが持つ個々の興味や学力の違いを梃子に学習を組織しようとする「協同学習」の2つの流れがあったことが明らかとなった。 さらにワークブックなどの分析から前者の「個別化・個性化教育」の流れの中には、「個別化された学習(individualised learning)」と「個性化された学習(individual learniing)」という2つの方向があったことも分かってきた。後者の「協同学習」の流れについては、「個別化・個性化教育」に比べると実践事例も少ないこともあり、その実態はまだ十分に明らかになっていない。「協同学習」の実態を明らかにし、「個別化・個性化教育」との違いが、どの程度当時のイギリスの教育関係者に意識されていたのかを考察することが今後の課題である。 本年度は、こうした研究成果をまとめ「コンプリヘンシブ改革期のイギリスにおける学級編成の問題」という題目で愛知教育大学で開催された教育方法学会第44回大会にて発表した。
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