本年度は、(1)教育委員会制度改革に関する資料収集および分析、(2)教育長の選任過程をめぐる政治過程に関する実証分析、(3)教育委員会制度改革をめぐる議論の理論的検討の3点について研究を行った。 (1)については、初年度に引き続き、本年度も教委制度改革に関する資料収集を継続し、そのデータをもとに分析を行った。1956年の地教行法改正、1988年に国会に提出され廃案となった地方教育行政法改正案、1990年代後半の地方分権改革での政治過程を比較し、それぞれの制度改革に共通する諸アクター間の影響力構造と、制度改革の成否を分ける要因を検討した。 (2)の教育長選任過程をめぐる政治過程については、中央省庁出身者が教育長に就任した事例を全て収集し、それらを規定する要因を計量分析と事例分析により明らかにした。その結果、都道府県教育長の人事運用は法制度と異なり集権性・縦割り性は強くなく、従来までの通説的見解とは異なる実態であることがわかった。 (3)の理論的検討は、これまでの教育委員会制度改革論の系譜を整理し、教育行政学・行政学にとって本研究がどのような貢献をなしうるのかを理論的に位置付ける作業を行った。また従来あまり検討されてこなかった制度選択の政治学といった文脈から、教育委員会制度論の新たな理論的分析を試みた。 上記3点のうち、(2)については平成19年度に学会誌および紀要に論文を発表した。また(1)および(3)については既に研究成果がほぼまとまっている段階である。研究はおおむね予定通りに遂行できた。
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