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2007 年度 実績報告書

明治初期の翻訳書における発達概念の使用とその人間形成観

研究課題

研究課題/領域番号 18730506
研究機関鹿児島大学

研究代表者

前田 晶子  鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10347081)

キーワード発達 / 発生 / 柴田昌吉 / 子安峻 / 発達論争 / 山下徳治
研究概要

平成19年度は、前年度に行った静岡県立中央図書館葵文庫所蔵の調査資料と、今年度の追加調査において入手した京都大学付属図書館所蔵の辞書類の分析を中心に研究を行った。その成果は、辞書上において「development」と「発達」の対訳関係の成玉定できたことである。柴田昌吉、子安峻著『増補訂正英和字彙』(1882)がそれであり、ともに通詞を経て外務省勤務となった二人の著者による本書は、その後の辞書群に大きな影響を与えたものである。
ここから明らかになったことは、(1)対訳関係の成立まで約40年を要したこと、(2)それ以前の訳語の系譜と断絶した語が採用されており、著者による独自の意味の読み込みがあったこと、(3)外務省勤務という点から国策との関連が予想されること、などである。このことは、発達概念の形成史において、そもそも結びつきにくい二つの語-「development」は「内なるものが解かれて滞りなく広がる」という意味をもつのに対して、「発達」は成人男性の立身出世を示す語として使用されていた-の結合が、明治前期の政治状況という固有の文脈の中で行われたという問題を提起している。
また、本研究の総括として、本研究の提起-近代日本において発達概念は身体論的な基盤を持たずに社会・政治的文脈の中で形成されてきた-がもつ現代的示唆を考察した。それは、(1)1934年発達論争において子どもの発達をめぐる〈個-社会〉の関係が問題とされたが、それは明治初期の国家要請の下で行われた「development」の訳語選択上の問題を初めて明示化したとう意味をもつことと、(2)1990年代以降の発達論をめぐる新動向(認知科学など)は、脳科学や人工知能という知見をもって身体論的な基盤を提起し、発達概念の再定義を試みているのではないかという仮説である。(1)は、拙稿「近代日本の発達概念における身体論の検討」(『鹿児島大学教育学部研究紀要』第59巻)において展開した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2008

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 近代日本の発達概念における身体論の検討2008

    • 著者名/発表者名
      前田晶子
    • 雑誌名

      鹿児島大学教育学部研究紀要 59

      ページ: 283-295

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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