研究概要 |
昨年度観察対象とした2歳児クラスの子どもたちを今年度も継続して観察対象とし,3歳児クラスにおいて保育のなかでどのように「対の関係」を創出する工夫がなされ,保育者と子ども,子ども同士の関係において対話的な関係がうみ出されていくのかを明らかにするために,次の2つの方法で研究を行った。(1)文献研究:保育者自身が実践をつづった研究会誌や実践報告集,保育目誌,書籍等を収集し,実践記録のなかで「対関係の創出」がなされていると考えられる部分を抽出し,そうした働きかけに対する子どもたちの応答の発達的な変化をみる。(2)保育場面の参加観察研究:(1)保育園の3歳児クラスに週1〜2回,朝の集まりと設定保育の時間帯に参加観察を行い,保育者の働きかけと子どもたちの様子について記録した。今年度は設定保育のなかで「対立関係」を含むごっこ遊びやルールのある遊びの取り組みに焦点をあて,導入時から発展過程における子どもの様子を観察した。とくに,状況の理解が困難な子どもの場合にどのような混乱が見られるか,どのような工夫が有用であるかを検討した。(2)ことばの遅れがある2〜3歳児を対象とする親子教室で参加観察を行い,子ども同士のやりとりが生起しやすい遊具や環境の設定について検討を行った。(1)については,生活活動や当番を組んで行う「仲良し二人組」,朝の集まりでの「話し手-聞き手」「問い-答え」,リズム遊びでの相手探し,ごっこ遊びでの対の役,対立関係を含むルール遊びの導入などで,対話・交流の密度を高める工夫がなされていた。(2)では,ごっこやルールのある遊びの中でもとりわけ役の「対立関係」が明確なもの(善-悪,何かをとる-とられるなど)が理解されやすく,「対の関係」が明確になるような小道具や大道具が重要であることがわかった。
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