平成18年度においては、デューイの教育理論を中心に、アメリカのリベラル思想の系譜における学校改革と公共性の首題を明らかにする試みを展開した。この課題を遂行するために、(1)1930年代の思想史的検討を行うとともに、(2)学校の学びの実践的関心からデューイの授業論の解明にに着手した。 (1)の研究の中では、デューイが子どもたちの学びを軸にして、民主主義と公共性を原理とする革新的な学校改革のヴィジョンを持っていた点を明らかにした。彼は、伝統的なリベラリズムの思想を超えて、「ともに生きるあり方」としての新しい民主主義の観点から、教育の再生に取り組んだ。学校は、社会形成と文化創造のエージェンシーとして、公共性の中心的なエージェンシーと位置付けられていたとを明らかにした。(『大東文化大学紀要、社会科学』) (2)については、デューイの学校論を、エンゲストロームを中心とする現代の活動理論と比較し、社会的で協同的な実践としての学びの考え方を提示した。その上で、デューイがシカゴ大学の附属小学校で展開したカリキュラムと学びのあり方についての検討を行った。(『語学教育研究論叢』、『大東文化大学教育学会誌』) また、平成18年9月にハワイ大学て、平成19年2月にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校で、1920年代から30年代のデューイと、彼と関わりのある思想家たちの資料収集を行った。これらの解明は、平成19年度の課題となる予定である。さらに、ハワイ大学では、カリキュラムセンターのリンダ・メントン氏に、デューイの学校論の実践的なアイディアについて多くの示唆を頂き、また、UCLAでは、教育史の専門家であるゾル・コーエン教授に教育思想史の方法論と、プログレッシブ期の教育についての具体的で詳細な検討課題を指導して頂くことができた。
|