平成19年度の研究活動として、1920年代から30年代のデューイの教育改革の構想を、その成立基盤を形成する彼のリベラリズム批判の思想と公共性構想の角度から考察した。それによって、彼がロック的な伝統を持つ初期の思想から、19世紀のレッセフェール的な市場社会へと至るリベラリズムの歴史展開を批判的に捉えたことを明らかにした。そして、アソシエーショニズムの思想を中心とする公共性概念を提示した。デューイが公共性と私事性の二項対立を解消し連続的に捉える試みを展開したことを指摘した。さらに、デューイのこの公共性の構想が、ネオ・リベラリズムによる改革が席巻し主導する今日の教育改革に対して貴重な論点を提供するものであることを明らかにした。彼の公共性概念が示唆する教育改革は、チャーター・スクールやバウチャー制度の導入に見られる市場による教育の統制や、国家の中央集権的な支配のあり方とは対極をなすものとなる。その構想は、アソシエーションとコミュニティにおける公衆たちの活動を中心に据えて捉えるものであった。その上で、デューイが協同的で対話的な学習を擁護して実践に取り組んだことを検討し、その具体的な様態を進歩主義学校の実践との試みから検討を行った。デューイの学校改革論は、市場や国家を基軸とする伝統的なりベラリズムに代替する公共性概念を示すものとして重要な意義を持つものであることを明らかにした。
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