本年度の研究は、オーストリアの戦後直後のカリキュラムが、1920年代の学校改革によって採択されたカリキュラムをそのまま使用しているという事実を、戦間期の連続性のひとつとみなし、その背景にある労作教育の戦間期と戦後の変容について考察を深めることにつとめた。 戦間期オーストリアにおいて先進的な教育実践をしたと評価されている労作教育は、戦後においても継承された。それには新しい概念として「Bildungsschule」という名称が与えられている。戦間期の労作教育と「Bildungsschule」の相違点は、前者が時代の制約から、教授法に限定されていたのに対し、後者にはすべての子どもに等しく教育の機会を与える教育制度である「統一学校」をはじめとする民主主義的な理念が内包されたことである。 また、本年度は、現在のオーストリアにおける教育改革の動向、とりわけ教育スタンダードの導入およびそれに伴う全国学力テストの実施に着目し、上記の研究の資料収集のために渡欧した際、ウィーン教育委員会を訪問しインタビューを行った。教育スタンダードに関するプロジェクトは2007年秋ごろに終了し、結果が出されることから、来年度も引き続き、この情報収集にも努めたい全国学力テストをめぐる動きは、日本においても注目されていることから、オーストリアの成果および課題を参照することができるだろう。
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