前年度は、ドイツ新教育運動の「子どもから(vom Kinde aus)」の教育を代表するベルトルト・オットー学校の幼児・初等教育段階の接続に関する具体的な授業実践をこれまで日本、ドイツ両国において取り上げられてこなかった一次資料を収集し、それらの資料を分析することを通じて、学びにおいて、固定的な「子ども-教師」の関係性を変革し「対話的関係」の構築を可能にするために、教師がいかに子どもを理解し、援助・指導の視座を見出したのか、カリキュラムデザインの観点から考察を進めてきた。 その結果、オットーの幼児・初等教育段階のカリキュラムデザインの特質として以下の3点を挙げることができる。(1)「型」としての固定的なカリキュラムを廃し、弾力的、協同的な多様性を帯びたカリキュラムを志向していたこと、(2)各教科の授業と総合の授業を平行して行い、学年区分、教科のスコープとシークエンスをより柔軟な幅を持って捉えなおしたこと、(3)公立学校と同様の授業時間数を確保し、学力的な保障を図ったこと。また、授業実践面の特質として、次の3点が挙げられる。(1)話し合い、質問、説明を重視する異年齢集団による協同的な学び、(2)子どもにとって身近な事物を教材・題材とすること、(3)子どもの側からの発案に基づく活動による学びの構成。これらによって、ボトムアップのカリキュラムデザインが具現化されており、それぞれの活動を成立させるためには、「子ども-教師」「子ども-子ども」間の双方向的な対話活動が基軸となっていたことを明らかにした。豊かな対話活動を展開するために、教室内に対話的関係が構築され、個々の子どもの言語力の充実が図られる取り組みが幼児段階から組み込まれていた。これらは、今骨の幼少連携を考える上においても重要な示唆を含んでいると考える。
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