1. 企業が支援したスカウト活動 米国統治下の沖縄におけるボーイスカウト活動の特徴は、沖縄の企業が活動に資金的人的な支援をしていた点である。そこで本年度は、スカウト活動を支援した企業の社内報と社史に着目し、活動の実態と社内での認識について考察した。いくつかの社内報には組織や行事の紹介があり、社史でもスカウト活動を支援した事実を指摘する記事があった。ここから、米国民非府が各企業にスカウト活動への支援を要請は考えにくくなる。このような事実は、社内報や社史に記録されるはずだからである。日本復帰後、各企業が支援を打ち切ることから、各企業が米国あるいは米国民政府に、米国由来のスカウト活動を支援しているというアピールを行っていたと思われる。 2. 子どもの非行予防・犯罪被害予防としての教育隣組 米国統治下の沖縄の地域社会において、子どもを見守る組織としての教育隣組の活動実践を、子どもの非行予防や犯罪被害からの予防という観点で解明した。沖縄の青少年問題協議会が発行する『青少年問題協議会だより』が紹介していた、いくつかの教育隣組の活動実践を検討した。沖縄各地で教育隣組が結成された背景には子どもの非行予防と犯罪被害予防があったが、これらは成果として可視化されにくい。そこで子どもを地域で見守り、その成果がわかりやすい学力向上とセットで取り組むようになったと考えられる。 3. 社会教育と学校教育の関係に関する検討 社会教育と学校教育の関係について、戦前の少年団に着目して検討した。社会教育が学校教育の補完的な役割を果たすという議論から、学校教育と対等な教育であるという議論への変遷を明らかにした。
|