2006年度は、研究計画に即して以下の2つの課題を設定し、研究活動に取り組んだ。(1)2000年代のアメリカの歴史教科書の内容をデータベース化し、1990年代までの内容と比較分析する。(2)ロサンゼルスの全米日系人博物館および民主主義保全ナショナルセンターを取材し、歴史展示の方針・内容・方法を分析する。 (1)については、2001年以降に刊行された10点の歴史教科書を収集し、その内容を1990年代に刊行されたそれぞれの旧版と対比させる形でデータベース化した。対象としたのは、「愛国者法」「日系人の強制収容」「セサル・チャベス」「新移民」に関する記述である。このデータベースは2006年9月に研究代表者のウェブサイト (http://homepage3. nifty. com/ubiquitous/US9020/index. htm)で公開した。そして、「愛国者法」と「日系人の強制収容」に関する教科書記述の、1990年代版と2000年代版の間の異同を中心に分析を行い、その成果を2006年8月に開催された多文化社会学研究会において、「2000年代の米国歴史教科書に表現される多文化社会の根拠-「国家安全保障」と「市民的白由」に関する記述を事例として」という表題で発表した。 (2)については、2007年3月にロサンゼルスを訪れて取材を行った。全米日系人博物館ではその公教育プログラムである『Life Interrupted』の教材をいただき、2004年にアーカンソー州で実践されたプログラムの内容、学習者の反応、今後の展開の方針等について担当者に取材した。民主主義保全ナショナルセンターでは、2005年の開館以来の状況や現在および今後の活動方針を担当者から伺うとともに、歴史展示『Fighting for Democracy』を用いた高校生向けの公教育プログラムの参与観察を行った。両館において教育カリキュラムに関する大量の資料をいただき、次年度に行う分析の素材を得た。
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