本年度の研究実施計画に基づき、以下の研究を行った。 研究課題1)のうち、(1)については、わが国の学校教育制度が持つ質的・歴史的特徴に着目し、中等教育段階におけるトラッキングや高等教育機関の多様性(大学類型および短大・専修学校の別など)を考慮した、多項トランジッション・モデルを考案した。(2)については、このモデルを1995年SSM調査のデータに適用した分析を進め、その知見を論文にまとめた。また年度途中には2005年SSM調査データも利用可能となったため、これを用いて上記モデルによる分析を行い、新たなデータから得られた知見を日本教育社会学会にて報告するとともに、論文にまとめた。 研究課題2)のうち、(3)(4)(5)については、合理的選択理論を中心とした不平等生成メカニズムに関する過去の文献に関するレビューを進めるとともに、文献データベースなどを活用し、常に最新の研究情報および論文を蒐集するよう努めた。また、当初は予定していなかったが、新たに不平等の測定法(Measuring Inequality)についても、理論と測定技術の両面について研究を進めた。これらの成果を活かし、現在、不平等生成メカニズムに関する、より適切な理論的・実証的研究法について検討を進めている。(6)については、先行研究において使用された、相対的リスク回避仮説の検証法(主観的な信念の直接測定による)の有効性を確かめるため、高校生を対象としたパイロット調査(質問紙調査)を行い、現在、その分析を進めているところである。
|