研究の初年度にあたる本年度は、最終的な研究目標であるゲームプロデューサ育成方法の解明に先立って、日米におけるゲーム開発者人材育成の実態を広く照射した。 具体的には、(1)ゲーム産業界で求められるスキル、(2)ゲーム開発者のキャリアパス、(3)企業内における人材育成、(4)教育機関における人材育成、(5)産学(官)連携による人材育成に関して、文献調査、質問紙調査、インタビュー調査によって、定量的データの統計的分析、定性的データの分析、事例分析など、多様なデータや方法論を駆使して検討を行った。 その結果、次のような知見を得た。 (1)日本では熱意・意欲などのソフトスキルが重視されているが、米国ではテクニカルスキルが重視され、各職種別に明確に定義されている。 (2)日本では専門職と管理職の2つのコースが確立されつつあるが、米国では開発・デザイン・プロダクションの3つのキャリアラダーが存在する。 (3)ゲーム産業では業界経験者の労働移動が頻繁に行われており、ゲーム産業全体で人材の育成と底上げが行われていることが示唆される。しかし、経営環境の劇的な変化に伴って、OJTをベースとした従来の企業内人材育成は多くの課題を内包しており、特にプロデューサの育成は困難な状況に置かれている。そのため、Off-JTやCDPの確立、企業外の教育研修機関の活用など、多様な人材育成策が求められている。 (4)日本では都心部に集積する2年制の専門学校を中心にゲームクリエイタが育成されているが、米国では大学を中心に高度な技術力を有するゲーム開発者が育成されている。 (5)日本では産学連携によるゲーム開発者人材育成は黎明期にあるが、九州・福岡において産学官連携によるゲームインターンシップが行われている。一方、米国では産学連携が重視され、人材の育成と確保、カリキュラム開発などが行われている。
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