平成18年度においては第一に、同和教育運動の中での<宿題>をめぐる議論や実践の事例を、各地の同和地区を訪ね歩きながら資料を渉猟した。18年度において特に重点を置いたのが、高知県地方において、同和地区を対象に配置され、地域・家庭・学校の結び役として活躍した「福祉教員」の軌跡に関する資料収集および聞き取り調査である。現在、経験者の高齢化が進み記録に残すのが喫緊の課題となっているが、さいわい草創期を知る経験者からインタビューをすることができ、それを日本オーラルヒストリー学会紀要『日本オーラルヒストリー研究』に発表することができた。第二に、同和地区における住宅改良事業の展開を、教育の視点、とりわけ宿題の問題に引き寄せながら再解釈する試みを、同じく高知県をフィールドに試みた。福祉教員からの聞き取りを通じて、住宅の問題についても知見を得ることができた。第三に、<宿題>という事象が近代学校システムの本質にどのように関係し、いかなる論理でそれが必然化されたに関する理論的・思想的研究を行った。イリイチの学校批判(いわゆる脱学校論)を、シャドウワーク論の視点から読み替えることを試みた。
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