本研究は3年継続であり、第1年目の平成18年度には、(1)高等学校における「キャリア教育」の現状をインタビューおよびエスノグラフィックな調査と、(2)現在の高等学校の「キャリア教育」の全国的動向を把握するための資料収集を中心に行った。 (1)の現状に関する調査は、群馬県立前橋東高校と群馬県立前橋工業高校を対象に、学校内の活動や授業等の観察、複数の学校に対する就職状況やキャリア教育に関するインタビューを実施した。 学校現場への導入が政策的に求められている「キャリア教育」を、教師たちがどのように捉え、具体的にどのように実施しているかを調査するためのものである。「キャリア教育」の中身としては、「職業に関する知識や技能」を身につけさせるという方向性と、「生徒一人一人の職業観、勤労観」を考えさせるという方向性とに分化している可能性がある。専門高校や専門学科では前者に、高校普通科や中学校では後者に傾倒しやすいと予想されるが、各学校タイプ間の差異に着目しながら、より具体的な授業内容とその構築過程、教員集団・生徒・保護者・就職先企業の反応等について聞き取ることによって、カリキュラムの社会的構築のプロセスとメカニズムについて明らかにすることを試みた。 また、「キャリア教育」の授業を中心とした参与観察と、生徒へのインタビューを含めたエスノグラフィックな調査を試みた。 (2)の文献調査では、「キャリア教育」や教育から労働へのトランジッションに関する文献を中心に収集し、その第一次分析を行い、論点整理を試みた。
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