本年度は、インタビュー調査と分析方法論の開発を中心に「高等教育におけるアニメーション人材の育成」に関する研究をさらに進める目的で以下のとおり実施した。 (1)インタビュー調査の実施:アニメーション産業の中間団体である「日本動画協会」へ視察・インタビューを行い、アニメーション産業の実態や人材育成の実情や展望に関する情報収集を行った。業界では、いわゆる「オタク」な若者よりも、一般の大学で教養・専門を学んだ人材を欲している点、業界自体が東京・杉並区に集積していることから、東京近縁の大学には地理的便宜性から応援や期待をしているが、それ以外の遠隔地に対する期待は必ずしも高くないことが明らかになった。 (2)日本労働政策・研修機構の勇上和文氏にインタビューを行い、特に専門学校におけるアニメーション人材の育成状況や業界との連携状況について伺った。特定の業界機関-教育機関の連携関係が成立し、卒業生の進路が保障されている場合もあるが、概して専門学校は厳しい状況にあり、業界参入後も厳しい労働環境にあることが明らかになった。同時にアニメーションを含めたコンテンツ産業に関する国策が、経済産業省(業界)、厚生労働省(労働環境)、文科省(教育)に分化し、連携が必ずしも取れていないことが明らかとなった。 (3)京都精華大学ヘインタビューを行い、'大学におけるアニメーション・漫画人材の養成状況をうかがった。もともと伝統ある芸術系を母体に成立しているアニメーション・漫画関係の学部学科の人気は高く、労働市場参入も容易であり、同種の専門の牽引役となっていることがわかった。 このようなインタビュー調査結果を踏まえつつ、並行して応用可能な統計的分析の開発やWeb調査システムの導入を図った。来年度はWeb調査を実施し統計分析を通じて、アニメーション・漫画関連人材養成の大学・学部・コースの成立と普及の状況について分析を進めたい。
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