本研究の目的は、家族崩壊後の子どもの類似する社会化パターンを社会学的実証研究において解明することである。そのため、本年度は以下の調査研究を行った。 I.実証研究:家族崩壊経験者への面接調査、参与観察の実施 調査研究1.面接調査による生活史蒐集:子ども期に家族崩壊を経験した青年に対して面接調査を行い、生活史的事例を蓄積した。なお、面接調査はプライバシーに考慮し、研究の主旨を説明し、了解を得られた場合のみに実施している。本年度は、特にこれから社会人となる者に対して、アフター・ケアの問題に焦点を当てて聞き取り調査を試みた。 調査研究2.参与観察による実態調査:児童相談所や児童養護施設において参与観察を実施した(平均3回/月のペースで実施)。本フィールドワークは、家族崩壊後の子どもの日常生活を把握することを目的としたものである。本年度は、(1)家族と暮らさないことで学校場面において生じる問題、(2)毎日の生活のなかで抱える不安とそれへの対処、(3)進学・就職に際して生じる問題に焦点を当て、フィールドノーツを蓄積した。 II.理論的研究:実証研究で蒐集したデータの分析と並行して、モラル・キャリア理論の視点から考察を行っている。そのなかで、子どもにとっての「家族崩壊」の意味づけに関する論文を執筆し、家族崩壊経験が個人的問題にとどまらず社会的課題であることを論じた。
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