研究概要 |
本研究の目的は,中学校数学図形領域における動的幾何ソフトを用いた学習環境下での,図形概念及び説明・証明の役割や機能に対する生徒の認識の変容などを特定することである。 平成19年度は,平面図形の運動による空間図形の構成や空間図形の平面上での表現に関して,調査結果に基づいて認められた効果と3次元動的幾何ソフトを利用した空間図形のカリキュラムとの関係を明らかにし,国際学会の研究論文として発表した。 また,3次元動的幾何環境下での空間図形の切断に着目し,授業の実施結果と質問紙法を用いて得られた学習状況を分析した。その結果,切断のカリキュラム構成と評価問題の構成について以下のような結果を得た。まず切断のカリキュラム構成について,切断面が平面と円錐など2つの図形の位置関係に依存することを生徒が的確に捉えるために切断面を動かしたり被切断図形を動かしたりすることを対にしたカリキュラム構成を配慮すること,及び,空間図形での考察を身の回りの現象に活かすことを目的の一つとして明確に設定することの必要性を導いた。一方,評価問題の構成については,変化あるものの一断面としての図形認識を分析できるような問題構成の必要性を指摘した。 加えて,3次元動的幾何環境下では図形を様々な角度から観察できることに焦点を置き,図形認識への3次元動的幾何環境の影響を論理の役割とともに考察した。その結果,図形認識については,連続的な変形と結びついた図形認識と視点の移動と結びついた図形認識の二つの面に分ける枠組みを提案した。そして,見取り図で線分の長さをとらえその理由を述べる問題において,立方体を視点の移動による連続的変化の途上に位置づける認識などは,3次元動的幾何環境下の特性を生かすことで学習状況が変わる可能性があることを指摘した。
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