本研究は、我が国の国語教育において「国語」という概念がどのように位置づけられ、それが学習者の国語意識の形成にどう寄与したのかという点を明らかにすることを目的としている。そこで、まずは明治期における国語科教育の実態に注目し、なかでも特に高い規範性を有しながら「唯一正しいもの」として提示されてきたと思われる「文法」の指導内容が、学習者の国語意識の形成に対してどのような役割を果たしていたのかを、実際に使用されていた文法教科書の検討などを通して明らかにしようとするものである。 本年度は、「国語意識」形成に関する文献収集を行うとともに、文法教育と「国語意識」形成との関連を明らかにするために、文法教科書の収集を行い、それらの整理し内容分析を行うことを中心に研究を進める。具体的には以下の通りである。 1 明治期に刊行された文法教科書の収集 明治期文法教育の指導内容と「国語意識」形成との関連を明らかにするために、文法教科書の収集を行い、そこに示されている「序」「凡例」に考察を加える。文法教科書の検討を通して「国語」が「文法」と結びつけられて指導されるようになった時期をほぼ定位することができたと思われる。 2 明治期の国語学研究と文法教育との交渉の実態について 明治期に活躍した国語学者である大槻文彦・山田孝雄・松下大三郎が当時の国語教育に対してどのような問題意識を有していたのかを明らかにするために、それぞれが所蔵していたと考えられる赴き国語教育関係の蔵書について検討を行った。 3 「国語意識」の国語教育的な意味づけ 本研究での中心概念である「国語意識」の研究上の位置づけを明確にするために、「国語」が用いられるにあたっての言語運用的な観点を視野に入れ、「目的意識」「相手意識」と関連付け検討を行った。
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