研究概要 |
本年度は,複式学級における算数科授業デザインのために,「異学年間の学び合い」を中心に,研究を行った。具体的には,鹿児島大学教育学部附属小学校の複式学級において,合同学習形態の算数科の実験授業を行い,異学年の児童間の相互作用の様相を分析した。 実験授業に当たっての授業デザインには,E.Ch.Wittmann氏の本質的学習場の理論を援用し,「計算三角形」を題材とした実験授業用の授業デザインを行った。また,分析に際しては,実験授業の様子をビデオカメラに収め,ビデオから作製した児童の発話記録を分析解釈する方法を用いた。 分析の結果,題材の選定によっては,複式学級における異学年間の学び合いの授業,つまり,合同学習形態での算数科学習指導が十分可能であることが明らかとなった。また,児童間の相互作用の様相に関しては,異学年の児童を含むグループでの共同学習において,「他者のアイデアをモニターすること」「議論したアイデアをグループとして共有していくこと」の重要性が明らかとなった。 今回の実験授業,およびその分析結果は,日本数学教育学会の論文発表会で成果として発表し,また鹿児島大学教育学部の教育実践研究紀要にも論文として掲載した。 次年度は,異学年間の学び合いをさらに深めるための算数的な題材の選定を工夫し,授業デザインを行うとともに,再度,実験授業を行い,分析結果をまとめたい。また,学校現場における複式学級での算数科学習指導に活用できるようパッケージ化の作業を行う。
|