研究概要 |
本年度は,国語教育・日本語学・日本語教育の三方向から基礎的研究を行った。まず,国語教育の研究として,『国語と国文学』83巻8号に「三上章における文法教育観」を掲載した。この論文は,生前は高いとは言えなかった三上の日本語研究における業績を再評価して戦後の文法教育史に位置づけたものである。 また,国語教育と日本語教育にまたがる研究として,『実践国文学』70号に「小学校JSLカリキュラムにみる国語科と日本語」を掲載した。この論文は年々増加している小学校での非母語話者児童への教育の適応のために構築された小学校JSLカリキュラムについて論じたものであり,国語教育と日本語教育の学際的分野として注目を集めている年少者日本語教育に,国語教育の観点からアプローチしたものである。 次に,日本語教育の研究として,『留学生教育』11号に「日本語学習者の名詞句の誤用と言語転移-アジア7カ国の日本語学習者の作文データに基づく分析-」(共著)を掲載した。であり,後者は国立国語研究所の作成した母語対訳付き日本語コーパスを用いて,アジア7カ国の日本語学習者と日本語母語話者の作文データに基づき,複合名詞句の誤用と言語転移について論じたものである。日本語学習者と日本語母語話者の作文データを比較・分析するという点において,本研究課題に合致していると言える。 さらに,日本語学に関する研究として,『世界の日本語教育』16号に「テノ名詞句の意味と形式」(共著)を掲載した。本研究は,「階段に座っての食事」「全力を尽くしての結果」のように,テ節を内部に含む名詞句(「テノ名詞句」と呼ぶ)について分析を行ったものである。このように今年度は,国語教育・日本語学・日本語教育の三方向から,本研究課題に沿った研究を幅広く進めることが出来た。
|