2006年4月の時点で開学している鍼灸の教育機関(全国79校)に在籍する東洋医学概論あるいは医学古典科目担当教員と全学生を対象とした、古典教育に関するアンケート調査の結果、多くの教員と学生が古典に興味があり、鍼灸医学を理解して臨床に応用するために必要であるが、難しいと認識していた。 教材に対する全国の要望、つまり図解や現代語訳を入れてわかりやすく、親しみやすいものに対応し、また系統的で臨床応用可能なものにした。内容は基礎知識(文法、工具書、天文学など)、中国古代哲学、古典(黄帝内経)を柱とした。見開きB4で完結し、右ページには書き下し、現代語訳、基本&解説、図解を、左ページには原文、注釈、発展&応用、コラムを基本的な構成とした。工夫した主な点 : 1.見やすく、読みやすいレイアウトで親しみやすさを重視2.多くの漢字にふりがなを付け、読みやすさを向上3.原文の内容のポイントを基本&解説で平易に提示4.図解で視覚的な理解を促進5.発展&応用で向上意欲を刺激。 鍼灸などの東洋医学は現代医学的な視点だけでなく、伝統的な考え方に基づく診療を行ってこそ、その真価が発揮される。伝統的な治療を行うためには医学古典教育が必須であり、多くの教員や学生の現状と要望に即した古典教材を開発した。これに対する良好な反応を多く得ており、古典学習入門への敷居を下げることができたのではないかと思われる。一人でも多くの鍼灸師にとって伝統的な治療を行えるようになるための第一歩となり、一般的な治療だけでなく予防や未病の治療を含めた日本国民の健康の維持・増進に少しでも寄与できれば幸いである。 なお、本教材は近く出版される予定(『東洋医学古典入門-基礎編-』(仮))である。
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