研究概要 |
研究課題を遂行するために、平成18年度は、市民科教育を新たに展開しているイギリスにおける調査および資料収集、そして、市民性育成を目指した地理教育内容開発に関する研究成果の概括化に取り組んだ。 1.イギリスにおける地理教育・市民科教育の教育行政および教科書出版事業に関する調査 イギリスで実際に展開されている教育行政、教科書出版事業について把握するために、イギリスの大手教科書出版会社ネルソン・ソーンズ社、教育技能省、ロンドン大学教育学部地理教育学科長のAshley Kent氏を訪問し、優れた地理教科書作成のための理論と方法、市民科の導入に関連する教育政策について質疑を行った。 2.イギリスにおける市民科授業視察および研究団体や地域社会との連携に関する調査 マンチェスター郊外にある女子中等学校を訪問し、初等教育段階における市民科授業を観察し、PSHEという他教科の授業とリンクさせた実践を確認することができた。また、ナッフィールド財団シティズンシップ教育評価部長のJenny Wales氏,CSV(Community Service Volunteer)本部所属研究員のPeter Hayes氏を訪問し、研究団体やボランティア団体と学校教育の連携についてインタビューし、教育実践上有用である文献、教材などの資料提示を受けた。 3.先行研究の成果と課題の概括化 イギリスにおいて特に1970年代以降進んだ地理教育改革の成果を受けて開発されたオックスフォード地理プロジェクトを分析した。その結果、教育全体で担うべき目標である市民性育成のうち、70年代のそれは地理教育固有の内容、地理的課題を取り上げ、仮説験証や意思決定などの学習方法で他地域にも適用可能な理論や一般化、すなわち社会認識形成を意図したものであることを明らかにした。その詳細は、岐阜工業高等専門学校紀要42号において発表した。
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