研究概要 |
本研究では,軽度発達障害児の就学後,読解につまずく原因を探り,言語指導方法を考えることを目的とした。軽度発達障害児が読解につまずく原因を考えるための指標として,本年度は,文字を読みはじめた時期の健常児の読解力に関係する要因を明らかにすることを目的とした。 文字を読みはじめる時期は個人差があり,能力にもばらつきがある。そこで,読解力のレベルごとに関係する要因を考えていくことが,細かなつまずきの原因を知り,も言語指導を組み立てていくことにつながると考えた。よって,読解力レベルを3つに分け,1群は短文課題も理解できないもの,2群は短文課題が理解できるもの,3群は文章課題が理解できるものとした。読解力に関係する要因として想定される読みの速さ・理解語彙能力・言語処理を伴った作動記憶と読解力との関係について検討を行った。その結果,読解力と読みの速さ・理解語彙能力・言語処理を伴った作動記憶にはそれぞれ有意な相関が得られた。また,読解力1群と2群では成績に差が見られたのは読みの速さであり,読解力2群と3群では読みの速さ・語彙能力・言語処理能力であった。このことから,短文理解には読みの速さが一定速度以上の必要があり,音韻的な符号化の効率性と読解力の関連性が示唆された。また,文章理解には音韻の符号化が一定速度であることに加えて,語彙能力と言語処理能力が必要であることが示唆された。
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