研究概要 |
軽度の発達障害児の就学後の問題として, 読解力のつまずきがある。読解力をつける対応策は, 読解力を規定する要因へのアプローチから考えていく必要がある。本研究では, 読解力を規定する要因とは、文字読み入門期では文字表記された単語を音韻的に符号化する段階での効率性と作動記憶の容量と語彙理解力および聴覚的理解の言語処理能力と考える。これらの読解力を規定する要因と読解力の関係を明らかにし, 発達障害児が読解につまずく原因を探り、その指導法を検討する必要がある。そこで本研究は、文字読みの入門期にある健常幼児・児童の読解とその規定要因の関係について, 特に聴覚的理解力との関係を中心に関係性を段階別に検討し, 読解力が身につく過程を明らかにすることを目的とした。まず就学前児に対して, 同一課題文の読解と聴覚的理解を実施した結果, 読解と聴覚的理解の関係には相関関係があった。短文レベルの読解可能な子どもでは読解得点より聴解得点が有意に高くなっているが, 文章レベルの読解可能な子どもでは聴解得点と読解得点では有意差は無くなった。読解の初歩段階では, 聴覚的理解が先に発達するが, 文章レベルになると, 聴覚的理解に読解が追いつくことが示された。 読解レベルと聴覚的理解レベルの関係でみると, 短文読解できない者では短文の聴覚的理解までが可能な者が多く, 短文読解できる者では文章の聴覚的理解が可能な者が多くなった。 就学前の子どもでは, 長さに関わらず文を読解するには読みの速さ, 聴覚的理解力, 語彙理解力が関係することが分かった。 読解力が育つには聴覚的理解力が関与し, 聴覚的理解力を育てるには語彙理解力がその基盤として必要だと考えられた。
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