研究概要 |
1.障害メカニズムの解明 読み書き障害児の臨床像を把握するために神経心理検査を作成・実施した.検査対象児から従来の考え(形態の想起障害)では説明できない症例を報告した(橋本ほか,2006).この報告では書字障害の背景に,漢字では学習方略の利用障害が,カタカナでは音韻と書字にかかわる運動覚との連合障害(あるいは運動覚の想起障害)という,異なるメカニズムが存在する可能性を指摘した. MEGをもちいた音読課題を実施した.実験では,測定中の頭の動きが問題となったので,子ども用の座椅子を測定装置に設置し,腰部をコルセットで固定,測定装置と頭部の隙間に低反発クッションを入れるという改良をおこなった.さらに頭部の位置を実験開始と終了時に測定し,位置のズレを確認することで,測定精度を向上させた.これらの計測精度の向上を行った上で,音読課題を実施した結果,健常児や健常成人に比べ,読み書き障害児では側頭葉の後下部に位置するCHで活動のピークが遅れるという知見を得た.今後,詳細な解析を行うと共に考察を加え,成果をまとめていく予定である 2.訓練の効果評価の試み 訓練効果を評価する音読検査がなかったため,新検査を作成し,その信頼性と妥当性を検証した.小学校3年生の男児25名を対象に種々の言語関連検査とともに,開発した単語速読検査を実施した.信頼性係数は再検査法にて求め,その結果,信頼性係数は0.88-0.91と高い信頼性をもつ検査を作成することができた.今後はこの検査をもちいて,訓練効果の評価指標として活用する予定である. 平成18年度は,児童の機能画像計測に伴う特有の問題の解決に多くの時間を費やしたが,今年度はその経験を活かし,児童の機能画像測定を実施していく予定である.
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