平成18年度に刊行された論文は、以下の二点である。まず、"Removing the Core of Power : The Reorganizations of the Party Apparat under Gorbachev"では、ソ連政治体制の核であった、共産党官僚機構の改組の決定、履行過程を追跡することによって、共産党官僚機構の改組が「権力の真空」を生み出したことを明らかにした。本稿は、日本の主要レフリー誌である、『ロシア東欧研究』に掲載された。 次に、「共産党体制下おける共産党改革の比較研究:ソ連・ポーランド・ハンガリー」では、ソ連共産党の改革の過程を、共産主義体制下のポーランドとハンガリーの党改革運動と比較することによって、共産党とその体制の一般的な特質を抽出しようと試みたものである。 また、平成18年度中にソ連共産党改革運動を扱った論文"Why Did CPSU Reform Fail? The XXVIII Party Congress Reconsidered"が国際的に著名な『Europe-Asia Studies』に掲載されることが確約された。これはすでに雑誌編集作業に入っており、19年度早々に刊行されるはずである。この論文では、本科研費の助成によりモスクワにて行なったフィールドワークの成果が特に多く反映されている。本稿は、掲載誌の知名度と内容が論争的である点と使用した資料の多様さによって、かなりの反響を得られるものと期待している。 最後に、今後さらに若干の手直しが予想されるために以下のリストには記載しなかったが、単著The Demise of the Soviet Communist Partyがイギリスの出版社Routledgeより公刊される予定であり、そのプロポーザルの申請、受理、契約、大半の草稿の準備という一連の過程は平成18年度中に行なわれた。その草稿にも、本科研費の助成によって行なったフィールドワークの成果が反映されている。
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