研究概要 |
本年度は,幼児を対象とした本調査を開始し,東京の幼稚園・保育園およびバンコクの日本人幼稚園において調査を行った。より具体的には,合計126名の幼児(3-6歳)を対象として面接(30分程度)を行い,合わせて,幼児の保護者と担任の教師・保育者からの行動評定を得た。まず,幼児の面接では,研究計画に従って,異なる他者(具体的な友人と母親,および「よく知らない子」と父親)や異なる性質の自己と他者の要求が葛藤する場面を作成し,「私だったらどうするか」についての言語報告を求めた。また,この回答の要因について検討するために,人間関係(ARS),自己(自己理解),認知能力(PVT,心の理論課題)についてもデータを収集した。母親および教師には,子どもの自己主張・自己抑制について尺度を作成し,最近の子どもの様子についての行動評定,および,発達期待について問うた。母親には,これに加え育児ストレスについても回答してもらった。 現在分析が進行中であるが,一部のデータを分析したところ,まず,先行研究と一致して,幼児期の発達において次第に自己抑制が顕著となり,自己主張が減少していくことが明らかとなった。しかし,同時に幼児期の子どもであっても,場面に応じて自己主張・抑制をすることが明らかになった。すなわち,「お友達も○ちゃんと同じケーキが食べたい」場面においては友達に譲ってあげるが,「大事なおもちゃを貸してほしいと言われた」場面においては,自己を主張するといった,場面に応じた調整を行う子どもが多く見られた。また,年齢が上がるに従って,行動選択の理由づけが詳細になっていくことが注目された。
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